環境負荷低減分野


ウインドチャレンジャープロジェクト

IMO環境戦略および当社環境ビジョン2030の達成に向けてあらゆる可能性を検討し、有力な技術について開発を続けています。
なかでも、風力エネルギーを推進力に活用するウインドチャレンジャープロジェクトは、化石燃料動力の登場で姿を消した帆を、最新の技術と材料で貨物船へ改めて適用する意欲的なプロジェクトです。

現在適用できる環境負荷低減技術のいずれか1つを採用するだけでは、当社環境ビジョンが掲げる高い削減目標を達成できません。風力による推進補助装置であるウインドチャレンジャーは、燃料転換技術(*1)や海面下の省エネ装置(*2)と干渉することがなく、他の省エネ技術に”足し算”で効果を享受できます。

自動伸縮可能な帆とすることで、風速に応じて受風面積を調整することができ、また縮帆状態の高さは通常船舶と変わらないため、橋などが航路の制限となることはありません。
また、帆の材料として複合材を用いることで重量を軽減し、船体強度への影響や船体動揺による帆への荷重インパクトを最小化しています。

2009年から東京大学における産学共同研究として基礎的技術の検討を始めて、2017年から当社および株式会社大島造船所をプロジェクト主体とする実装フェーズ(*3)に入りました。
実装フェーズでは、10万トン級のバルクキャリアに1本の帆を設置する計画で詳細設計を行い、2019年10月に、一般財団法人日本海事協会から硬翼帆(るび:こうよくほ)式風力推進装置の設計に関する基本承認(AIP;Approval in Principle)を取得しました。引き続き詳細設計を進め、2022年中に硬翼帆を1本実装した新造船の運航開始を目指しています。1本帆によるGHG削減効果は日本-豪州航路で約5%、日本-北米西岸航路で約8%を見込みますが、将来的には複数の帆を実装し、他のGHG削減対策と組み合わせてIMO目標(*4)の達成に向けての有力なソリューションへ発展させることが目標です。

また、本プロジェクトにおいては、当社グループの株式会社MOLマリンは、ウインドチャレンジャーシミュレーターを構築し、入出港における数値シミュレーションやビジュアルシミュレーションを行い、各地の保安部や水先人会等の関係機関への説明も進めています。

(*1) LNG燃料やメタノール燃料

(*2) 船型改良やPBCFなど

(*3) 実装フェーズ参画会社・組織:(株)商船三井、(株)大島造船所、(株)相浦機械、金沢工業大学、東京大学、関西設計(株)、東京計器(株)、(株)ジーエイチクラフト、商船三井テクノトレード(株)、(株)大内海洋コンサルタント

(*4) 国際海事機関(IMO)が2018年に策定した海事セクターにおけるGHG排出量目標。2050年までに船舶からのGHG排出量の総量を2008年比で50%削減することが求められている

帆走中CG
荷役中CG
実証機
ビジュアルシミュレーション中

商船三井プレスリリース


ゼロエミッション電気推進船の開発・普及促進に向けて共同出資会社「e5ラボ」の設立

当社は、旭タンカー株式会社、株式会社エクセノヤマミズ、三菱商事株式会社とともに、4社で電気推進(EV)船の開発、および普及促進を通じてEV船を中心とした新しい海運インフラサービスの構築に向けた戦略的提携に合意し、新会社「株式会社e5(イーファイブ)ラボ」(以下「e5ラボ」)を設立しました。

商船三井プレスリリース


LNG燃料船の開発

船舶からの排出ガス規制が国際的に強化される中、LNG(液化天然ガス)は、従来の舶用燃料重油と比較し、Soxに加え地球温暖化の原因となるCO2や、酸性雨などの原因となるNOxの排出量も大幅に削減できる船舶用燃料として、普及拡大が見込まれています。

【LNG燃料タグボート】

2019年2月、当社が発注し金川造船(株)が建造したLNG燃料タグボート「いしん」が竣工、当社初のLNG燃料タグとして大阪湾で就航しました。大阪ガス(株)からLNG燃料の供給を受け(陸側の LNGローリーから 船へLNG 燃料を供給するtruck to ship方式)、商船三井グループの日本栄船(株)が運航しています。

現在、船舶の多くは重油を燃料とするディーゼルエンジンを搭載していますが、LNGを燃料とする「いしん」は、エンジンから出る排ガス中の二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などを削減し、環境負荷を低減します。「いしん」は、国土交通省が認証する、「内航船省エネルギー格付け制度」において、A重油使用時と比較して二酸化炭素(CO2)排出量を約25%削減するなどの優れた環境性能が評価され、最高ランクの星5つに格付けられています。
また、「いしん」は、A重油とLNGそれぞれを燃料として使用できるヤンマー製のエンジン「6EY26DF」2基を搭載。国内で初めてIGFコード(*)に準拠して建造され、LNG燃料船としての安全性を担保しています。さらに、国内のLNG燃料船としては初めて、着脱可能な構造のLNG燃料タンクを船尾側暴露甲板上に設置することで、燃料供給時および整備点検時の利便性を高めています。

(*) IGFコード:International Code Of Safety For Ships Using Gases Or Other Low-Flash Point Fuelsの略。ガス燃料及び低引火点燃料を使用する船舶に対する安全要件を規定するコードで、2017年1月1日発効。


インテリジェンス機能搭載した舵取機の開発

本プロジェクトは、舵取機のセンシングとビッグデータ解析による、船舶の安全性向上及び省エネ運航の実現を目的としています。

舵取機は船舶の運航を司る重要な機器のひとつであるにもかかわらず、これまでその制御データはあまり着目されてきませんでした。そこで当社は舵取機の制御に着目し、その新たな視点からさらなる船舶の安全性と省エネ運航の可能性を探るべく研究開発を進めています。

川崎重工業建造の大型原油タンカー(VLCC)に搭載している同社製舵取機に、油圧や流量、作動油温度や消費電力などさまざまな値を測定するセンサーと、瞬時かつ大量にデータを得られる大容量高速データ収集装置を搭載しました。

これらの搭載により、舵取機データと各種航海データ(船速、針路、エンジン負荷、舵角など)から成るビッグデータの収集が可能となり、そのデータを解析することによって舵取機の故障予兆及び燃費削減が実現すると考えています。

将来的には本プロジェクトで得られた知見を用い、船舶のさらなる信頼性向上、操船性向上、省エネ運航に貢献する「インテリジェンス機能搭載型舵取機」の開発を目指しており、本件はその開発に向けた重要なステップと位置付けています。

システムイメージ図
大容量高速データ収集装置

商船三井プレスリリース


プロペラ装着型効率改善装置「PBCF(Propeller Boss Cap Fins)」

プロペラ装着型効率改善装置PBCF(Propeller Boss Cap Fins)は、すでに全世界で3,400隻を超える船舶に採用されていますが、商船三井は、株式会社三井造船昭島研究所、商船三井テクノトレード株式会社と共同で、省エネ効果をさらに向上させた改良型PBCFを開発しました。フィンの形状や高さなどを改良することでプロペラ推力増加とトルク軽減を図り、未搭載船と比較して5%前後の効率アップを実現し、特許も世界各国で取得しています。

また、PBCFはプロペラのキャビテーション(水中で気泡が発生・消滅していく現象)を減らすことにより、水中騒音を特定の周波数域で3~6デシベル低減させる効果も確認されています。クジラをはじめとする海中哺乳類の生態への影響を軽減させる技術としてバンクーバー港(カナダ)が実施する環境プログラム「EcoAction Program」における水中騒音低減技術に選定されました。さらに海洋環境保護及び船舶の安全運航を目的として設立されたグリーンアウォード財団が世界規模で取り組んでいる「グリーンアウォード・プログラム」に参加。30年以上続く歴史ある独自技術で、持続可能な地球の未来に貢献し続けています。

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